平成30年に地元天草で消防士を拝命、救急救命士としての救急活動などの中で「天草地域の救命率を向上させるにはどうしたらいいだろうか。」と考えた時に、「救命の輪」の重要性に着目しました。その重要性をいかに天草の皆さまに周知するのか。今回、お得な「ポイント」をテーマに、私の取り組みと思いを伝えます。「胸骨圧迫と人工呼吸はできますか?」119番通報を受ける指令室で、私は何度もこの質問をしてきました。しかし返ってくる答えは「できません…」心肺停止の現場に駆け付けると、そこには、ただ泣き崩れるしかない人の姿があります。そして、その隣でまた一つ命が消えていく。私が勤務する天草地域は、広い地理的条件により、救急車の現場到着平均時間が、熊本県全体の平均時間より約50秒長くかかるという課題があります。心肺蘇生が1分遅れるごとに生存率が大きく下がるため、この50秒は決して小さくなく、生死を分ける鍵となります。しかしながら、自分にはできない」難しそう」と救命講習の受講をためらう方も少なくありません。皆さんに問いかけます。自分の家族、友人、大切な人が倒れた時、助ける準備はできていますか。講習を受けることは、自分のためではなく、愛する人を守るためのものです。たった数時間の学びが、誰かの命を守る力になるのです。みんな分かっているはずなのに、どうしたら救命講習を受講してくれるのだろうかと考えました。そこで私は、救命講習をもっと身近に感じてもらう方法として〝ポイント制度〟を思いつきました。受講すると買い物や公共サービスで利用できるポイントが付与される仕組みです。人は「役立つから学ぶ」だけでなく「得するから参加する」という動機でも行動します。その一歩が命を守る力を身につけることにつながるなら、入口はどちらでも構わないのです。この発想をさらに広げる中で、熊本健康アプリを活用した〝天草健康ポイント事業〟に結び付けられるのではないかと考えました。このアプリは、県民の健康づくりを目的に熊本県内の市町村が共同で運営しており、ポイントが貯まると、ポイントに応じた特典を受けることができます。このアプリとの連携を始めた結果、受講者は昨年同時期の約6倍になりました。私はこの取り組みを通して感じたことがあります。救命の輪は、知識や技術の伝達だけでなく、参加のきっかけをどう作るかにかかっているということです。最初の動機が〝ポイント獲得〟であったとしても、講習を受けた市民は実技を通して「自分もできる」という自信に変わり、「いざという時は必ず行動したい」と口にされます。その変化こそが、私たちが目指す真の成果なのです。命を救う行動に〝最初の一歩〟を踏み出してもらうための仕掛けとして、このポイント付与は大きな力を持っています。そして、その一歩が積み重なることで、地域全体に救命の輪が広がっていきます。私たち消防職員にできるのは、市民に寄り添い、学びやすい場を提供し、その背中を押し続けることです。私は信じています。小さなポイントが、大きな命の重みへとつながり、やがて確かな救命の輪を築いていくことを。どうか皆さん、〝ポイントで広げる救命の輪〟を熊本から全国へと繋げていきましょう!きっと、皆さんの心の中では、大切な人を守る準備ができているはずですから…。ほのお2026 6号14優秀賞優秀賞九州支部代表 天草広域連合消防本部(熊本) 戸田 開斗第49回 全国消防職員意見発表会ポイントで広げる救命の輪
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