消防隊、救急隊、予防係員、指令管制員などさまざまな業務を経験してきたオールラウンダーな消防職員。仕事には常に100%の力で挑み、休日には5歳と1歳の子どもたちと120%の力で遊んでいます。手話の勉強を始めてから今年で20年。その経験を生かして、災害現場での新たな伝達方法の可能性に挑戦します。みなさん、災害現場を思い出してください。車両のエンジン音、サイレンの音、建物が燃える音、ガラスが割れる音。災害現場で我々消防職員は、さまざまな「音」が鳴り響く世界で活動しています。「ホース!」、「放水はじめ!」、「建物倒壊危険あり!退避!」。隊員の飛び交う声、怒号、無線の音。喧騒の中で正しい情報を得るのは容易ではありません。私たちは聞こえない、聞こえづらい状況下で声だけを頼りに活動しているのではないでしょうか。火災現場で面体を着装して屋内進入すると、自分の声は思うように通らず、仲間の声もはっきりとは聞こえません。NBC災害で防護服を着ると、さらに声が聞こえづらくなります。「今、自分は何をもとめられているのか?」、「こちらの状況はちゃんと伝わっているのか?」。不安や焦りを感じて活動した経験は、一度や二度ではありません。声以外に確実な伝達方法があれば、それが私の思いでした。私は特技として手話ができます。10年前から初任教育生を対象とした人権啓発研修に関わり、また3年前から横浜消防の中で手話の勉強会を立ち上げました。ここでは、実際に聴覚に障害をもっている方と手話通訳士の指導の下、聴覚障害に関する知識の勉強と、災害現場で聴覚障害者に会った時でも手話でコミュニケーションができる技術を磨いています。このような活動を行っていく中で、私はあることに気が付きました。「基礎的な手話の単語を消防職員同士の共通言語として使えないだろうか」と。災害現場のような「音のある世界」、聴覚障害者が生きる「音のない世界」。双方は相反するようで必要な情報が得られにくいという共通点があります。私は今から3つの手話を行います。「要救助者発見!」、「建物倒壊危険あり!」、「退避!」。これは手話の表現としてすでに存在しています。これを声と併せて災害現場で使えば、耳からの情報に加えて視覚的にも情報が得られ、伝達はより速く、より確実に伝わります。災害現場で使える手話単語の検討と災害現場を想定した訓練は、私たちが立ち上げた勉強会ですでに行っています。これを初任教育および現任教育の必須科目とし、横浜消防全体に広げたいと考えています。さらに全国の消防本部へ波及させ、応援出場でも初対面の部隊同士で意思疎通ができる、そんな現場の実現が可能です。私たちは市民の命を守るため現場に立っています。だからこそまず守るべきは、共に戦う仲間の命です。声だけに頼らない新しい現場の言語をつくる、私は手話を消防の第2言語にし、消防の現場にもうひとつの安全装備を加えたいと思います。ほのお6号 202613最優秀賞最優秀賞関東支部代表 横浜市消防局(神奈川) 佐藤 文哉第49回 全国消防職員意見発表会手話を消防の第2言語に~災害現場に“共通の手”を~
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